仕事で撮影する時、撮影に立ち会う時、
何を考えているか。
一枚の写真で勝負する写真家とは異なり
我々の撮る写真は制作素材の一部、つまり部品です。
部品としてのそれぞれの役割があって
主役級もいれば脇役もいる。
それぞれのポジションに適した被写体と撮り方を考えています。
私自身が考える撮りたい写真、理想の写真は
現在の姿の中に、そこはかとなく過去や未来を感じさせるもの。
これまでの経緯や歴史、または、これからの希望や展望が見えるもの。
古い言葉ではありますが
それは「ロマン」を感じるものであり
映像のワンシーンを切り出したようなものです。
いわゆる文脈のあるもの。
そういう写真なら一枚で強い広告、ポスターになるでしょうね。
そういう力のこもった写真を撮りたい、または撮らせたいです。
また編集をしていた視点でいうと
写真の余白に見出しやリード文を入れるデザイン上の計算をしていたり
レイアウトの都合でタテでもヨコでも使えるように
考えて撮ったりすることもあります。
そういえばむかーし取材した、
デザイナーであり写真家でもある常盤響さんが
同じようなことを言ってました。
メディアの主役が紙からウェブに移り
写真の取り扱い方も大きく変わってきましたが
自分の中での写真の撮り方は
雑誌の特集を作る感覚が強く残っています。
うちでは創業から10年ほどは
スタッフが撮影も編集も執筆も兼任していたので
後工程の事情を理解して作業することを
がっつり学べたのは今思えば貴重でした。
撮影は撮影だけ、
取材編集は取材編集だけ、
デザインはデザインだけ、という
自分の専門の中だけを見ている考え方には反対で
効率や専門性を高めることは良いとしても
仕事のつながりや総合的な品質という視点では片手落ちです。
デザインを理解しない編集、
編集を理解しないカメラマン、
クライアントの使用目的に無関心なデザイン、
こういう仕事ぶりは嫌いです。
前工程と後工程の仕事のやり方や考え方を理解し
できれば少し自分でもやってみて
幅広い知識を持って自分の専門を高めたいもの。
以前も書いたことですが
「武器としての決断思考」に書いてあったプロフェッショナルの条件、
・専門的な知識・経験に加えて 横断的な知識・経験を持つこと。
・それらをもとに、相手のニーズに合ったものを提供できること。
がどんな時にも必要です。
自分の仕事の前後左右、
関連する仕事への理解は欠かせない。
うちで「ディレクター」と呼ばれる人は
この前後左右が見通せる人です。
こういうことを無理にでもやらされた人、
自分から積極的に掴みに行こうとする人、
こういう人とやる仕事は、おそらく面白いと思います。