再現性という言葉を私はよく使います。
そしてその概念を大事にしています。
どんな意味で使っているのかというと
多くの人が持っているイメージ・印象を「再現してみせる」こと、
「それっぽく作りこむ」ことを指しています。
感じてもらいたいイメージがあるから
それと似た印象を見つけて再現してみる。
でも再現するというのは意外に難しいものです。
再現するためには細かな観察眼が必要だからです。
それらしく感じる理由があり、そう見える手法があり、
数値やセオリーで表せることもある。
「そういう感じに」見えるにはちゃんとした理由があります。
文章にしろ、写真にしろ、デザインにしろ、
なぜそう感じるのかを理解し説明できないと再現は難しく
それっぽく見せることはできません。
それっぽく見せるためには
頭の中にイメージのストックがあり
また机の引き出しや本棚には参考となる資料があり
幅広いジャンルの異なるサンプルを数多く見て、
その特徴や違いを認識していることが必要です。
世界的に有名なギタリストのギターソロをいくつも再現できる人ならば
新曲のアレンジでは様々なチャレンジが可能なはず。
これまで続いてきたシリーズ物を引き継いで
それを違和感なく継続できることも再現性。
過去に目にした雑誌のイメージを参考に
企業誌を作りこむことも再現性。
写真の雰囲気を外国の雑誌で見た
撮り方を参考に仕上げるのも再現性。
お店で食べた料理を
自宅で再現することを思い浮かべてみれば
再現することが簡単でないことは
理解してもらえるのではないでしょうか。
材料もジャンルも異なるプロダクトに着想を得て
「あんな感じで」の一言で作れる感性と技術。
文章、写真、映像、デザイン、音楽において
この再現性を身につけている人は
再現の先にある自分らしさを見つけることもできるのではないでしょうか。
そういえば
鹿児島でクラブイベントが盛んだった20年近く前、
あちこちの洋服屋や美容室、レコードショップに貼られていたイベントのフライヤーは
50年代や60年代のジャズやアメリカンポップスの
レコードジャケットをモチーフにしたシャレたデザインが多かった印象です。
当時の草の根(?)デザイナーさんたちの再現性に
今更ながら感銘を覚えます。